p28

 カンっ。とコンクリの破片を爪先で蹴り、襟に王冠クラウン紋章エンブレムの中央に“Zツァイ”という階級の入ったダークグレイの制服のスボンに両手を突っ込み、ほんの数時間前まではオフィス街のメインストリートだった路をゆっくりと歩いた。
 ……くだらねぇ。
 チッ。と舌打ちしたソーヤは、辺りに微妙に漂っているPSYの僅かな波動ウェーブにピタッと足を止め、周辺で自分と同じく調査をしている仲間にテレパスを送った。

『お前ら!  完全にヴォリューム無くさねぇと、元凶にバレんだろ?!  いつもナンの訓練してんだ!』

 ソーヤの一喝で周りにあったPSYサイの気配は消え、空気中にはただただ埃っぽい風の気配が残った。……が。 ゾクリという寒気がソーヤの襟足を撫ぜた。

「……っなん、だ?」

 生暖かい風が吹き付けてくる。その中に、自然のオーラの中に自然でないモノを感じてソーヤは襟足首に手をやる。
 どこだ。いったいどこから……────────っ?!  見てる!!
 バッとソーヤが身を翻した時だった。 ドクン、脈打つ鼓動とともに、金縛りに遭ったかのように固まってしまった。
 黄金の長い髪。幻を見ているかのように焦点の定まらない虚ろな、ルビーのような深紅の瞳。
 50メートルほどの距離。そこからでもわかる美しさに、ソーヤは思わず魅入ってしまった。
 歳はたぶん同じほど。そんな少女に瞳を奪われてしまっている事に気付いたソーヤは、ハッと正気を戻して改めてその少女の不自然さに違和感を覚えて眉根を寄せる。

「……ここはまだ一般人の入れる場所じゃねぇぜ?」

 ポケットから出した左片手を腰にやり、やや大きめの口調で少女に言った。 ……が、返答があるわけでもなく、少女はただただそこに立ちつくしている。
 このダイバが全壊してんのになんでアイツ……どこもなんともねぇんだ……っ。

「は、はじめっから……ダイバがこうなる前から居たのかっ?」