p36

 ドキン……!
 かぁっと顔が熱くなっていく。
 あたしは自分にびっくりして、うわあって立ち上がった。

「? ……どうした、有栖」

「……っううん! なんでもないっっ! あ、あたし夕飯の買い出し行ってくるっっ!」

 なっ、なんであたし和泉なんかにドキドキしてんのよっ?
 サイドボードの引き出しからプライベート・レーヴェルの赤のチェックのサイフを取り出して急いで外に出た。
『“誰かが”いてくれなきゃ……。 ひとりだと、ぶっ壊れちまう……』
 ……まるで、自分がそうなんだっていうような……。 切ない、言い方。

「有栖っ!」

「っはい!」

 うしろから叫ぶように名前を呼ばれて、あたしは勢いよく返事なんかしてしまう。
 玄関口に、あたし用のサンダルをはいて出てきた和泉に思わず笑っちゃいそうになったけど、あんまり和泉が真剣な顔だったから、ついついあたしまで真剣になっていた。