p.20

「では次のニュースです」

 俺はブレザーをソファの上にリモコンと一緒にほっぽり投げて、台所の奥にある冷蔵庫に足を運んでがさがさと中をあさる。

 ……何もねぇな。
 半年前は、こんなじゃなかった。

 俺は朝思っていたことをまた思う。
 バタンと冷蔵庫を閉じてソファに向かい、ドサッとため息と共に身を投げ出すように座った。

 半年前は、学校から帰ってきたらお袋が夕飯作ってて、7時になれば親父も帰ってきて、3人で夕飯を囲った。
 あれは、半年前、10月末……だったと思う。 暑かった季節がようやく終わり、ちょうどいい陽気の朝、だった。
 親父がおかしくなり始めたのは。
 いつもどおりの朝。
 おおい、母さん。
 玄関先で親父がお袋を呼んだ。

『靴紐がなぁ、結べないんだ』

 手がかじかんでなぁ。おかしいよなぁ。こんなこと、ないよなぁ。
 親父はとても不思議がり、気味悪がっていた。
 けれどお袋は笑いながらしてやり、
 寝ぼけているんじゃないですか?
 なんて言っていた。