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「ごめんね、また寝坊しちゃったね」

「いいよ。適当に食った」

 さりげなく髪を整えながら台所の入り口から入ってきたお袋の脇をすり抜け、2階の自分の部屋へブレザーとネクタイを取りにだだだっと階段を駆け上がる。
 ブレザーを肩からひっかけ、ネクタイを首にかける。 このネクタイがどうにも面倒くさい。それに加えてバイクに乗るから、例の空き地に着くまではほぼ固結び状態だ。

「お袋昼飯っ!」

 だだだっとまたまた騒がしく階段を駆け下り、大声で言った。

「これで買ってちょうだい」

「いちいち言うなよ……っ。今日は何時?」

 玄関のとこでどかっと座り、千円をポケットにしまい込み、靴をいじりながら後ろに立つお袋にきく。

「午後から3時まで病院に居て7時までパート。 ……ねぇ、葵もたまには病院へ行ってあげて?」

「いってきます」

「ねぇ。あお……」

 よけーなコト言ってんなよっ!

 バンッ! と玄関の扉を閉めて、がんっ! と扉を蹴り、裏庭に停めてあるバイクに逃げるようにして走って行った。