p.9

「降りろっ」

「ヤ! ……です」

「っっんのヤロウ……っ。 乗ったことあるのかよ。なくて乗るならそれなりの覚悟しろよ?!」

 メット越しにすごんだ俺の言葉を真っ向から受け止め、睦月は真剣にうなづく。

 相変わらず顔は幼いが、眼がマジだ。

 なんだかなぁ……といった感じで、足元に備えてある予備のメットを睦月に渡した。

「お前ってさぁ、俺のこと知ってるの?」

「……うわべは知ってますけど、 “中身をこれから”知るんです。ボク、あれで本当にセンパイにあこがれましたから!」

 メットを着けて、睦月は嬉しそうに言った。
 俺は、そんなに大したことを入学式(あのとき)言ったとは思えない。 けど、“あれ”から何かが変わったのか……。 と、思えるようになるには、そう、時間はかからなかった。