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お袋の肩はカタカタと震えている。寒いんだ……。

「……――そんな、大声……出すことないじゃない?」

「何言ってんだよ! 電話の一本もよこさねぇで!」

寒かったんだよ。

「……悪かったわよぉ。たな卸しが終わらなくて、仕方なかったのよ」

「仕方なかったって……!」

「あなただってもう子供じゃないんだから、だいじょうぶだと思ったの」

違うんだよっ。 そうじゃないんだよ!

遠くからチャリのこぐ音が聞こえてきた。 俺はその瞬間うちの前に停めてあるバイクにまたがり、メットをかぶっていた。

「センパイ?!」

「葵!」

「睦月! 後ろ乗ってこれつけろ!」

チャリをバイクの後ろに停めた睦月にメットを放り投げ、エンジン音に消されつつある声で叫んだ。

「葵! 夕飯……!」

「いらねぇよ!!」

そう言って俺はアクセルをふかして走っていった。

「おばさん帰ってきたんですね!」

「ああ! どこ行く?!」

「今日、晴行さん遅番で閉店ラストまでいますよ!」

そのまま俺たちは晴行さんの店に行くことになったのだ。