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「ふ……っ、なに、宣戦布告?」

 赤くすり切れて、まばらなかさぶたになっている右手の甲を見て言った。

 そーですね。宣戦布告……です。 逃げないで下さいよ。

 顔が笑う。
 受話器の向こうでどんな顔して睦月が言ったか、考えるとなぜか……おかしかった。

「オーライ。もう、逃げやしないさ。“待ってろよ”。 絶っ対に」

 俺は絶対の“ぜ”に力を入れて言った。
 睦月は笑いながら、はい。とひと言言って、お互い受話器を置いた。

 かたちのない答えをさがして終わらない旅をする。
 ゆずれないことをひとつ、持つことが本当の自由。

「お、日下。 もう具合は良いのか?」

 朝一で職員室に行って、担任にあいさつした。

「あ、はい。ご心配かけてすみませんでした」