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 目が、じんと熱くなった。
 言葉はもう、告げられなかった……。

“「ゆずれないことをひとつ持つことが、本当の自由じゃないかな」”

 涙がぼろぼろと溢れると同時に、脚が折れたかのようにがくんと床に座り込んだ。
 これが何の涙なのか。どうして俺は、泣いているのか……。 何にも考えることが出来なかった。
 ただただ必死に、晴行さんの言葉を拾おうと、受話器のあとが耳に付くほどきつくあてた。

“「……親父さん、大事にしろよ。 じゃあ、元気でな」”

「?! っはる――!」

 別れの言葉も言えないまま、不通音だけが受話器から聴こえてきた。
 それきり、晴行さんの声を聴くことは、なかった。

 翌日、睦月は学校に来ていた。
 アイツは何にも言わないまま、俺が屋上に行く足についてきた。
 ホームルームも終わった土曜日の午後。 空は重く下がり、どことなく空気に雨の匂いを俺は感じた。

「……晴行さんから、昨日電話があった」

「え?」