vol.1
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西暦2301年、地球、生物科学総合研究所(通称 V.S.L)――――
深夜2時30分を回ろうとしている時間。ここVSLの中にある科学者寮には、昼間と見まがうような明るさの部屋が1室、あった。
寮番号、“Φ-000-18”。科学博士号銀河きっての最年少合格者、史郎の部屋兼研究所である。
「史郎っ!」
シュッ! とそこへ、空気からつくられるようにして1人の少女が部屋へ現れる。
エメラルドグリーンのミニのスーツ。陽に当たれば濃い蒼に変色するダークブルーの腰まで伸びた髪。そしてそれと同じ色の瞳。
それらを持ち合わせた少女はぷくぅっと頬を膨らましながら史郎の名を呼ぶ。
銀河系広しといえど、この青年を呼び捨てに出来るのはこの少女しかいなかった。
「暁……。次元移転はしちゃいけないってあれほど言ってあるだろう? 次元移転は……」
“研究総合制御機器”のオーロラヴィジョンからふっとその淡い碧の瞳を離し、史郎は一言「椅子」と言ってから、暁に小言をし始めようとする。
史郎の足元のフローリングからヴヴッという音を立てて黒革の椅子がせり上がってきた。
「あーっもぉ! 『ディメチェンは次元を歪めて身体を跳ばすから精神的負担がおっきんだ!』 でしょ!? わかってるわよ。耳にタコが出来るくらい聞いた!」
「……じゃあ何でするの」