p19
「あ・た・し。イトコって設定ね。ホラ、うち帰ろうよジュンペー」
インフォグラスだけを右目に伸ばし、暁は順平の家の方向を探すようにきょろきょろとする。
すると暁は一点だけを見つめてにぃっとイタズラっぽく笑った。
「みーっけ! ……もぉ逃げらんないよん」
ぴっと暁はインフォグラスから音を発してひとつのアパートの一室をグラスにズームアップさせる。
部屋には、女性が一人あらんばかりの姿で眠っていた。
「……なんか、アンタの部屋、露出狂の女がいるんだけど」
「!? っわぁー! ~~~ッッな、なな、何者だよお前ぇッッ!!」
顔を真っ赤にして叫んだ順平に、暁は一瞬ひきつった笑いを戻して口元だけに笑みを浮かべる。
「……言ったじゃん。未来から来たって。信じろなんて言わないけど、“協力”は、してネ」
「~~~っなんで俺がするんだよ」
いまいち納得のいかない順平はイラつきながら自分の帰路につこうと足を速めた。
“今日は厄日だ”。 俺の人生始まって以来の。
「だってジュンペーがあたしが来た時に一番初めに居たんだもん。……それに、マインドコントロールしやすそうだったから。ジュンペーのママ」
ぞくりとして順平は暁を振り返る。
なぜさっき言った、自分の家に居た女が、母親だってわかったのか……。それよりも……。
何……? “マインドコントロールしやすそうだから”……?
ざわっと“何か”が自分の背中を走り抜けるように感じたそれに順平は恐怖感を覚え、一言叫んでその場から走り去った。
「————っ! お袋になんかあったらただじゃおかねぇからな!!」
必死の形相で言った順平の背中を冷ややかに見送った暁だったが、その背中の気を自分の脳にインプットしている最中であった。
オーラがつかめないと次元移転ができないからだ。
「……わっかりやすいオーラ」
暁は呆れるようにして呟き、インフォグラスを閉まって瞳を閉じた。
『暁、次元移転はね? 次元を歪めて身体を跳ばすから精神的負担が大きいんだ。だからむやみに使わないように。いいね?』