p55
「っはあ! はあ! ————っひ……がんばなっ、ありませんかっ?」
「彼岸花ぁ? あんなしんきくせぇのはないな。そこいらの土手か神社か寺にでも生えてンじゃないの?」
次の店で最後。商店街も大部分が終りを告げてガラガラとシャッターが閉まり、長々と続くアーケードの灯りが群青に染まる冬の空を浮き立たせる。
「あら、彼岸花って多年草なんだけど秋のお彼岸で枯れちゃうのよ」
「っ!? かっ、かれ……る?」
「そう。……今咲いてたら奇跡ね。なんかイイ事あるかも!」
枯れる。
その言葉が順平の頭の中でぐるぐると回り、ついて離れなかった。
走り疲れたせいもあるのか、よろよろと歩いていた順平はどんっと人にぶつかってしまった。
「っおい! どこ見て……ってテメェ順平!」
がつっ!
ぶつかった男子が叫ぶのと同時に順平は殴られてアスファルトにおもいきり滑り込む。
「っ痛ぅ……! ンだこの野郎!」
殴られた顔を手の甲で押さえて順平はすぐ様立ち上がる。
誰かと思えば、昨日の土手でケンカしたヤツだった。頭、というより額に包帯を巻いている。