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女王は驚きと有望の眼差しでヤ=シャを見つめ、“母”の想いでひと言、言った。
「ラ=ゴウを、頼むぞ」
「はっ! もったいなきお言葉、恐悦至極にございます」
「——っは! ……っは、はぁ、はぁ……」 ドクン、ドクン、ドクン……。
がばっ。 と、影良は夏がけの薄いシルクのケットをはねのけ、カラカラに乾いた喉から荒々しい息を吐いた。
いやな、夢だ……。
影良はじっとりと汗で湿った右掌で額を包み、深呼吸をする。
「……満月、か……」
影良は疲れたようにまたベッドに横になり、右にある窓に見える見事なまでに円い月を懐かしそうに瞳を細めてみた。
眠るのが、恐い。 目を閉じると、“あの人”が……いる。
っ思い出したくない。 暗い思い出をわざわざ甦らせて、また傷口ひろげるなんて……。 そんな、こと……。
「影良、朝食の準備が整ったそうだ。 ……影良? 開けるぞ?」
こんこん。 と、ノックした光記は、いつもなら返事をするはずの影良の声が返ってこないのを不思議に思い、ドアノブを回した。
ぶわっ!
「うわっぷ! 窓、開けっ放しじゃないか……。 と?」
カサッ。 と、足元に散らばっている無数の紙を拾い上げ、光記はああ。 と、ひとりごちる。 その紙には五線、そして音符が総て手書きでされていた。
光記はその五線の上に書かれている#1から順に紙を集め、興味深そうに目を通す。
「……いい曲じゃんか」
ベッドの足元にあったギタースタンドからストラトキャスタを光記は取り上げ、籐細工の椅子に腰掛けてヴァン。と、E音を奏で出す。