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「影良、さん?」

「えっ! あ……はい。 ……何、ですか?」 ドクン、ドクン、ドクン……。

 急に呼び止めてきた女の声に、影良は一抹の不安を感じながらそろぉ。と、振り返った。
 整った化粧。 スタイル。 身のこなし……。 大人の、ひと……。

「っ亜伊! ……このひとがオレの、恋人だ」

「っ光記!」

 影良に近寄って行った亜伊より先に光記は影良のもとへ駆け寄り、低い口調でそれだけを言った。
 影良は話がわからず、光記と亜伊を交互に見る。
 切なげな顔をした光記とは相違い、みるみるうちに亜伊の形相は険しく変わる。

「……っ、そう。だから別に恋人になりたいって言ってるワケじゃないって、さっき言ったでしょ?」

「影良、話は後で聞くから、席……外してくれないか」

 堂々巡りの話題に光記は歯軋りして影良にこの話題を聞かせたくがないために、必死で退室させようとする。
 けれど亜伊はここぞとばかりにふたたび影良に声をかけて足止めさせた。

「影良ちゃん? クスッ。 私、自己紹介してなかったわよね」

「……私のことは、ご存知なんですね」

 自分もしたほうがいいのか。 一瞬戸惑うが、亜伊の態度に眉間をしかめて向き直る。

「ええ、“この人”から聞いているわ。 私は風見亜伊、歳は貴女と10違うわね。……で、クスッ。 光記の婚約者」

 ズキン!!
 ぐらり。 と、一瞬影良は闇を見た。

「——……え……?」

「っまだオレは承認していない! 亜伊っ、勝手なことを言うな!」