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 パァン! と、いう鋭い音が深夜に響き渡った。
 はらはらと、とめどなく溢れる涙をそのままに、影良は呼吸を整えようと必死になる。

「……痛ぅ」

「……っで? なんで、こんな……こと。 っふ、私がっ! 光記の恋人だって……知ってるんでしょう? な、のにっ」

「……彼から言われたのですか?」

 ターシャは口の中を切ったらしく、左端の唇からツウ。 と、流れた血をぺろりとなめ、顔を影良の方へと向けなおし、押し殺した声でそうたずねた。

「そ……よ。 言われたのっ。好きだって!」

「……アナタの身内を殺めてしまった事への償いではないですか?」

 冷めた、声。
 なんだろう、聞いちゃ……いけない気がする。

「え?」

「同情だけの恋なら、誰にでもできるんですよ? エイラ」

 壊れて……いく。
 影良はぐっ。 と、拳を握り、震えながら頭を振る。

「や、めて……」 ドクン、ドクン……。

「代償としてそばにいる男の下へ、アナタは帰りたいのですか?!」

「や……っだぁ!」 ドクン、ドクン、ドクン……。

「——……っワタシのほうが、こんなにもアナタを愛しているのに!」

 ———— 愛シテイルノニ! ————

「……え……?」

 時間が、止まったように感じた。
 ターシャは言ってからはっ。 と、して顔をそむけ、切なそうに下唇をかみ締めた。
 反して言われた影良は言葉を理解するのに時間がかかり、しばし呆然としてしまう。
 愛している。 確かに、ターシャはそう言った。