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さっ。 と、顔を青くして、影良はか細い声で疑問符を打つ。 しかしそれを遮るように光記は叫び、下唇をぐっ。 と、かみ締める。
「“まだ” ってことはこれから可能性が出ると考えてもいいわよね。 ……こうして身内の承諾も得たんだし、貴方にマイナスになることはないと思うけど?」
昨日と同じままの赤い爪を自分の口元に這わせ、亜伊は小首をかしげてみせる。
影良はというと、亜伊のその口調にやはり光記と同じく下唇をかみ締めた。
ドクドクと、上がっていく脈拍。ドロドロと、速流する血液。 “信じてる”。この呪文を頭の中で数回繰り返せば……。
「……光記は、“私に” そばに居て欲しいと言ったんだ。 っあなたじゃない!」
震える手をきつく握り締めて、影良は大きくひと息つく。
昨日のことを、昨日の光記の言葉を、嘘だと思いたくない。 疑いたくない!
「アラ、ずいぶんと強気ね。 フフッ。そんなところも似てるのかしら。 ……私はこの人をプラスにできるわ。けれど貴女は九十九光記という男をマイナスにしかできないじゃない。 ね? “裏切り者の羅豪女王”」
ぞくん!!
影良は目を見張り、自分の両腕で自分自身を即座に抱き包む。
うら、ぎり……?
「貴女、尊光を愛していると云っておきながらあの男に寝返ったのよ。 それとも、そういう策略だったのかしら?」
「やめろ亜伊!」
隣で放心状態になっている影良を見て、光記はその言葉の矢を止めようと怒鳴り声を上げる。
しかし亜伊はこれといって悪びれる様子もなく、淡々とその矢を放つ。
「気をつけて光記。いつ寝首をかかれるかわかったものじゃないわ。 前の戦で尊光はそれを感じたはずよ! 思い出してないなんて言わないわよね?!」
「やめろ!! はぁっ……。 亜伊、なぜ、なぜその記憶を識っているんだ」
自分を抱く手によりいっそうの力を入れて、瞼を閉じ、影良は息をひそめた。
そして何より、光記のほうがその言葉に衝撃を受けたらしく、呆然として艶かしく微笑う女性に言った。
「クスクス。 だって、私も貴方と同じ能力を司っているのよ? 何も不思議じゃないわ」