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「大丈夫か? ……影良」

 ベッドの足元にある籐細工の椅子に影良を腰掛けさせた光記は、うつむいたままの彼女の名前を呼ぶ。
 そしてそれに応じるように顔を上げ、涙で濡れた頬を手の甲で拭い、影良はひっそりと尋いた。

「……裏切ったの? 私……」
 
 影良と同じ視線に合わせようと膝を床に着き、影良の頬に手を伸ばしかけた光記はびくっ。 と、して止まってしまう。

「……っ私、光記を裏切ったの?! だから前世で私を殺したの?! だってっ、だって羅豪は尊光を愛してたん……——」

『ヤ=シャ……わたくしの想いはどうしても受け入れてもらえないの……? こんなにも、貴方を愛しているのに……。 ——なぜ……っ!』
 ……あの時の記憶の叫び……。 どういうこと? ……尊光、裏切り、そして……夜叉。
“「前世むかし、アナタはワタシを想ってくれていたはずです」”
 ———— どういうこと?! ————

「——……ターシャっ」

 と、ひと言影良が切なそうに囁いた時だった。
 ざぁっ! と、翠の風が影良を中心として部屋全体に吹き荒れる。

「っ?! ——っえい……っっ!」

 その風に巻かれて、部屋のものは高く舞い上がり、光記はその風に耐え切れずに飛ばされて、ベッド脇のサイドボードに背中を打ちつけることになった。
 ———— 覚 醒 ————

「————っ!!」

 光記は打ち付けた背中の痛みに耐えつつ、風の中心にいる翠色の瞳を虚ろに輝かす少女を驚きの目で見た。
 オレの覚醒時とはまったく違う……! こんなにも……こんなにも龍司の能力ちからというのは違うのか?!
 と、その時だった。 部屋の外からドアを叩く音が風に混じって届いたのは。

「光記! どうしたんだ?! 光記!!」

 さすがに能力ちからを持たずとも異変を感じたのか、裕也の声だった。