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 ユエ第97代目統者 ユエ=ア=テイ=シャ=ケイ=ト女王。
 現月界統者である彼女、ラ=ゴウの母は、美しかったであろう面影をわずかながらに残したまま、自分の娘を招き入れた。

「母上……」

「ふふふ……。七日と顔を合わせないと、この病は進行が早い。驚いたであろう?」

 ドクドク。 と、速くなる鼓動と、ケイ=トの顔つきの変わりように、ラ=ゴウは思わず顔を背けそうになった。
 誰が見ても分かる。 死期が、近い。

「っ母上、わたくし……っ、わたくし縁談など……!」

「義務ですぞ、ラ=ゴウ」

 ドクン!!
 病で床に伏していても、なお衰えぬ厳しい口調。
 ラ=ゴウはドレスの裾をキュッ。 と、つかみ、天蓋を見つめたまま言った母の言葉に両膝を床についてベッドの上で肘を乗せ、両指を組む。

「女王となる血を絶やしてはなりませぬ。 いつか必ず、我等をこのユエへと追いやったセアの四神しじんからセアの地を奪還するまでは、龍司の血脈を絶やしてはならぬ」

「母……上」 ドクン、ドクン、ドクン、ドクン!

 泣きそうになっている自分の娘に気付き、ケイ=トは顔をゆっくりとラ=ゴウに向け、左の人差し指と中指をすっ。 と、上げてラ=ゴウの額の中央にかざした。

「……本来ならば、式典を開き、民の前で正統の証として継承しなければならないのだが……。わらわにはもう、民の前に立つ力がない」

 ケイ=トはベッド脇のラ=ゴウにクスリ。 と、笑い、ひと筋の涙を流しながら、ぽうっ。と、指先を翠色に光らせた。
 龍印の継承。
 本来なら、18となる歳を待ち、継承される印。

「——……っ!! はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。 ヤ=シャ、まだまだ……ラ=ゴウは幼い。 っ、そなたに最高官事務総長、総裁ヴィーダとしての任を授ける。 ……ヤ=シャ、ラ=ゴウを任せるぞ」

「……母、上?」