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 薬瓶をこぼれないように持ち、自分の左手に重ねたヤ=シャの手を、両手で握り返した。
 その切なる瞳に、2人ともが時を止め、このままの時が永遠に続くかと思われた。

「その前に、お願いです。 薬を、どうか早くにお飲みください」

 ラ=ゴウははっ。 と、してヤ=シャから手を離し、とくとく。 と、高鳴る胸を抑えながらひと息ついた。

「……感謝、いたします」

 そうひと言ヤ=シャに囁くように言ってから、ラ=ゴウはさっき見た母の顔を思い浮かべて、ぐっ。 と、瞳を強く閉じた。
『女王となる血を絶やしてはなりませぬ。 いつか必ず、我等をこのユエへと追いやったセアの四神しじんからセアの地を奪還するまでは、龍司の血脈を絶やしてはなりませぬ』
 ———— 母上!! ————
 くっ。 と、ひと口で薬瓶の中身を飲み干したラ=ゴウは、薄暗い部屋の中で翠色に輝く涙をひと筋、頬へと伝わす。

「ヤ=シャ、わたくしの願いを叶えてくださると……。 そう言ったわね」

 空いた瓶をラ=ゴウから受け取り、ヤ=シャはすぅっ。 と、眼を細めた。 そしてまだ幼さを面影に残したままの主に、

「いかにも」

 そう静かに答えた。
 この世に生を受けて17年。 離れない日は5日と空いたことがなかった。それは、ヤ=シャがラ=ゴウの参謀故のこと……。 自分のサポーターとしての役を、ケイ=トに命じられていたから。

「……今朝方、母上がわたくしの縁談を持ってきたそうなの。 それを、お断りして」

 消えるように言われた言葉に、ヤ=シャは思わず聞き返しそうになってしまうが、ひと呼吸置いて長いシルエットをゆらりと起こしてラ=ゴウの瞳をまっすぐ見つめて言った。

「……陛下、ケイ=ト様にも言われたではありませんか。“義務”なのだと」

「っ! わたくしは……っ! わたくしはまだ死にませんわ! 知らない殿方と義務でこの先一生を共にするのであれば、わたくしは……っ、わたくしはこの場で自害致します」

 シュンッ! と、右手に創り出し、自分の喉もとに突き立てたるは、やはり龍司の証。龍神のつるぎ
 誰に習ったわけでもない。 龍司としての能力が、自然と発動する。