p43

 ヤ=シャはそれを見て瞬間息を止めるが、すっ。 と、漆黒に染まった瞳を細めて静かに言った。

「……でしたら、お子だけでも授かりなさいませ。 お世継ぎだけで構いません。先々代の女王は、生涯大王おおきみを持たず、女王お1人でこのユエを統治されていた。 ラ=ゴウ様、貴女様もそうなされたら良いではありませんか」

 生涯伴侶を持たず、次の女王となるべく女児だけを授かれと……。
 蒼い惑星をバックに、ヤ=シャは淡々と冷めた口調でそう言った。
 ラ=ゴウはそのヤ=シャの口調にくらり。 と、軽いめまいを覚えるが、剣を喉元から放すそぶりは見せない。
 ……残酷な、人……。
 ラ=ゴウは静止したまま涙をまた一縷いちる流し、ヤ=シャに向かって告白した。

「——……ヤ=シャ、わたくしはっ、わたくしは生れ落ちて17年。 ずっと、そなただけを、愛しておりました。無論! 今も変わりませぬ……。 っ——この17年、わたくしは従順にこの日の……龍司を継承するというこのためだけに、自分を押し殺してまいりました。なのに……っ、なのにまだこの上この想いを殺して女王という名の為に生きろと申すのですか?!」

 流れ落ちる雫は翠色の瞳に輝き、うす暗い中にブロンドの長いウェービィヘアが振り乱される。
 身分の違い。
 そんなものは百も承知で、わたくしはこの人を愛してしまった。 わたくしのすべて……。わたくしの、唯一……。

「——……皇族の、義務にございます」

「————?! ヤ=シャ……わたくしの想いはどうしても受け入れてもらえないの……? こんなにも、貴方を愛しているのに……。 ——なぜ……っ!!」

 身分の差など、自分が女王になりさえすれば、どうにでもなるのだと思っていた。 なのに……。
 がくんっ。 と、両膝をついて座り込み、ラ=ゴウは軽く舞い上がった金色の髪も床にふぁさっ。 と、流すように下ろした。

「——……っ私には、いくら最高官事務総長ヴィーダという位を戴いても、ラ=ゴウ……貴女様を愛すことは出来ません。 しかし、あまり縁談先の王子をお待たせしてもよろしくありませんので、そちらは、お断り申し上げておきます。 先刻の、お約束ですから」

 然るべき職務を全うするように、先ほどと変わりなくそうラ=ゴウに告げたヤ=シャは、ラ=ゴウの告白などなかったかのように彼女の脇をすり抜けて、オートドアへと足を向けた。
 と、その時だった。