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 とても懐かしそうに七澤睦月は話した。
 話をされた葵といえば、難しそうに顔をしかめ、頭の中で必死に過去の記憶をたぐり寄せている最中だったりする。
 生温い風はどこからともなく吹いてきて、葵の髪をさらりと撫でて、そしてまた、どこかへと流れていった。
 そしてその風が落ち着いた瞬間。葵の中でザクロの実が弾けたように、ぱんっと“高校時代”というものがよみがえり、愕然とした。

「あ、その顔は思い出してくれましたね。センパイ」

 その一言で葵はいらぬ“誤解”というものを相手に頭の中で格闘することになってしまった。
 葵は昔、(といっても高校時代)誰ともあたり触らず……簡単にいうならば必要以上誰とも口をきかないし、寄り付こうともしない。そんな少年だった。が、この七澤睦月はそんな周囲の偏見には応じず、素直に葵へと溶けこみ、仲良くなっていったのだった。
 が、以前の葵を知る者にしてみれば、それは異様な光景だったのか、火の無い所に煙がたった。
 日下 葵、同性愛好者疑惑。

「……っ誰に聞いたんだ、睦月」

 がっくりと肩を落としている葵はこめかみに中指と人差し指をあてがい、睦月に聞く。

「え、場所ですか? 場所は自分で調べましたよ。 あはは、半年もかかっちゃいましたけどね」

 本当に嬉しそうに話す睦月とは正反対に、葵の表情はこの生温い風と同じ様に重くなっていく。

「……で? どうしたんだ、いきなり」

 葵は諦めたのか開き直ったのか分からないが、ひとつ溜め息をついて静かに睦月にきいた。
 睦月はその言葉が聞きたかったのか、ぱあっと顔を明るくさせて葵の問いに答える。