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「社長。お客様ですわ」

「こんにちはお客様。 どうぞこちらへお掛け下さい」

「……」

 2人の変わり様の速さに睦月絶句。
 応接ソファをその女性へと勧めた葵は睦月にお茶汲みなんぞを頼む始末である。
 するとその女性はぷっと吹き出して口許をおさえ、おかしそうに言った。

「やだぁ、日下くん。あたしのこと忘れてるでしょう」

「え……」

 その女性の下座に着こうとしてそんなことを言われ、葵は拍子抜けしてしまう。

久世 薫くぜ かおる。高校3年の時に同じクラスだった久世よ」

 葵無言。
 昨日の睦月の事を考える時と同様、難しそうに顔をしかめて考える。が、今度ばかりはザクロの実が弾けることはなく、そのまま考え込んでしまう。

「やっぱり覚えてないか。日下くん、無口だったものね」

 目を懐かしそうに細めて話す薫の前にだんっ! と、無作法にお茶を出したのは、煎れた睦月ではなく小枝子だった。

「粗茶です。 で、どのようなご計画を?」

 お世辞にも営業スマイルとは言い難い小枝子の形相に、実は喧嘩っぱやいなこの人。と思ったのは今朝方早々被害に遇った睦月である。

「ああ、そうよ。急だけど明後日から京都に行きたいの。3人。 急だし、融通のきくところ思い付かなくて……。日下くんが代理店やってるって友達に聞いて、探して来たんだけど」

 どうにかならないかな。