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「相っ変わらず、いい環境でお仕事しているのねぇ」

 日下旅行代理店事務所のドアを開くなり言った小枝子は、眉間に皺を寄せて部屋を見渡す。

「不精者なんだよ。悪いね」

 手に取るような分かるやすさのイヤミに片眉だけを下げて葵は苦笑する。

「……僕、掃除しましょうか。センパイ」

「え、いやだって悪いよ」

 上目使いにそう言った睦月は葵の返答を聞くなりむんずっと彼のシャツを掴み、噛みつくようにして言い返した。

「いーですかっ。僕は助手なんですよ! 使える時に使わないでどうするんですかっ!」

 何が「いーですかっ」。なのか分からない睦月に迫力負けした葵は、一歩、後ろに退がった。

「じ、じゃあ頼もう、かな……」

 諦め半分、小声で言った葵は、これで万事良しとなるはずだったのだが……。

「ふぅん……」

「っえ、あ……ど、したの。小枝子ちゃん」

 くらぁい声で感心する声の主をびっくりして見た葵は、嫌な雰囲気に少々物怖じする。

「私が清掃会社に依頼してあげるって言ったら、『そんなことしなくていい』。って言ってなかったっけ……」

「う……っ。 じゃあ、お願いしようかな」

「あ、もしもし。日本清掃会社ですか?」

 直情径行。 葵がさっきの睦月と同じ態度を取るや否や間髪を入れずに小枝子は携帯電話を取り出し、交渉を始めていた。