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そろそろ定年退職間近かと思われる初老の刑事が、目が虚ろになり茫然自失となっている睦月に言った。
なんで僕はこんなところにいるんだろう。
……きもちがわるい。
「……僕は、やってません。記憶が、ないんです」
睦月は青ざめている顔をうつむかせたまま、ひっそりと、か細く独り言のように呟いた。
「嘘は言っちゃいかんな」
灰色の机の対面側から睦月の青ざめた顔を覗き込んで初老の刑事が睦月に呆れた溜め息をつく。
「ほれ、この2人の男。知っとるだろう」
もう何回も訊いて飽きているその質問を刑事は再度繰り返す。
部屋の出入り口の脇に置かれている同じ机には、筆記係としての若い刑事が座っていたが、立ち上がり、2枚の写真を大雑把に並べる。
『なぁ、睦っちゃん。オレぇ、睦っちゃんのじゅうっよーな秘密! 知ってんだよねぇ』
がたんっ!
「な……、どうしたんだ。落ち着け。な? おい」
写真を差し出した若い刑事は、椅子を後ろに引っくり返して立ち上がった睦月を見てびっくりしたように言った。
「は……知らないっ。なにもっ! 僕はなにも知らないっ、知らないんだぁぁぁ!!」
「っおい! 誰かっ、医者呼べ!!」
睦月はひゅっと喉を鳴らし、苦しそうに顔をしかめてその場へと倒れて気を失うのだった。