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「はい、510です」
日下様、渋谷様からお電話です。
「はい、繋いでください」
もう収穫があったのか。
そう不思議に思う葵だったが、鞄の中を引っ掻き回しペンと手帳を取り出す。
『もしもし、葵? 京都府警から送られてきたファックスなんだけど、いいか。』
「ああ、言ってくれ」
葵は受話器を肩と耳に挟みペンを握る。けれど渋谷は、
『いや、目撃者の調書なんだ。近くにファックスあるか?』
「目撃者の調書? あー、今からコンビニ走る。そっちのナンバーそのままでいいのか? あー、そうだな。じゃあコンビニから一度電話するよ」
葵はザザッとメモをとり、その1ページを切り取って受話器を置き、圭助に言って部屋を飛び出した。
「ちょっと行ってくる」
そして15分ほどした後、ファックス紙をくるくると丸めた形で葵は帰ってきた。
その顔には明らかに圭助に何かを問う兆しがある。
この時点ですでに時間は午前0時を回っていた。
圭助は葵から無言で渡されたファックス紙を広げ、やはり無言でそれに目を通す。
その紙には、きちんとした丁寧な字でこう書かれていた。
参考人・小宮敏江 当時36歳 主婦
調書。という字で始まり、かいつまんで説明すればこういうことになっていた。
小宮敏江は京都へ妹の出産のために向かう途中だったという。 母からの送金でグリーン車の切符を買い、乗っていたのだ。
東京から京都へ向かう途中で2回、トイレへ足を運んだ。 一回目、睦月は眠っていた。いびきが大きかったので覚えていたのだ。 そして2回目、睦月が居ないと思いながらトイレへ行ったところ、血だらけでナイフを持った睦月に会ったという。