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「あちらに美味しい甘味処があるんです。そちらで休憩にいたしましょう」
葵は小枝子に感謝しながら携帯に声を送る。
「もしもし、渋谷?」
確認するようにして言った葵の声に呼応するようにして向こう側から声が返ってきた。
おう、あのなよく聞けよ。今日府警から依頼があって戸野辺と結城のアパートへ行ってきたんだわ。
「渋谷、ちょっと待て」
葵は覚えきれない量かもしれないと、携帯をイヤホンに接続し、鞄からペンと手帳を取り出す。
「……ん。言ってくれ」
10月6日、戸野辺達が殺される1週間前にそれぞれの口座に1千万円振り込まれているんだ。
葵は眉間に皺を寄せ、ペンを走らせるのをやめる。
「1千万、だって? どこからそんな……」
それが振り込まれてるのが現金で、振込人の名前、住所電話番号まですべて偽装だったんだ。
数秒の沈黙が走る。
最初のそれを破ったのは葵のほうだった。
「じゃあ特定不可能、ってわけか」
不可能って訳じゃないけど、かなり難航するな。 あ、それと2人のアパートのカレンダー10月6日のところに“K”っていう文字が書かれていた。
「は? ケイ? ケイってアルファベットの“K”?」