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「はぁ? なんだって渋谷」

 その電話はせっかくの最終日の朝食時の途中に掛かってきた。
 やはり睡眠不足となり、少々不機嫌になっていた葵は、朝食を中断された事も重なりその不満は増幅する事となる。

 ……お前な、誰のためにこんなヤバイことしてやってると思ってんのよ。

 渋谷は呆れた感じでそう言う。
 葵、反論できる訳もなし。
 そう言える訳などないのだ。実際法に触れている事をしているのだから。

 ……わかったね、葵くん。いいか。手短に言うぞ。

 なに威張ってるんだよ。

 などと葵は思うが、そんなことは露程も言わずにペンを握る。

「ど~ぞ」

 うっわ、かわいくねぇな。 戸野辺知也が1年前に出所した京都府刑務所に行って、同房だった田川洋平ってヤツに会ってみろよ。

「っ前科持ちだったのか?」

 葵は一瞬声を荒げそうになったが、息を飲んでひっそりと受話器の向こうに聞いた。

 ああ。傷害罪で6か月の実刑だ。京都駅の構内でチンピラと乱闘。相手のチンピラを刺したとして下った判決だ。

 キリキリと下唇を噛んで葵は押し黙る。

 面会時間は9時からだから。

 渋谷のその言葉を区切りにしてピッと通話を終了し、鬱陶し気に前髪をかき上げて、フロントへ出向いた。

「あの、京都府刑務所の場所を知りたいのですが」

 この分じゃ正午の新幹線に乗るのは難しいだろうな……。