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 さすがに動揺したらしく、田川はガラス越しに身を乗り出す。さっきのいやな笑いは消えている。

「急な質問で悪いと思うんだが、彼は出所したら何をしたい。 ……ってことは言ってなかったか?」

「ははっ! おれぁサツと猫は苦手でなぁ。そうだ、探偵もな」

 もったいぶった様にして田川はまたあのいやな笑みを浮かべる。

「警察でも探偵でもない。 何を、したいと言っていた?」

 いい加減気の長いほうではない葵はすっと目を細めて詰問に近い聞き方をしてしまう。

「へへ。そうイラつくなよ。 女と金。ここにいるヤツぁそんなことばかりだよ。ヤツも例外じゃあない」

 1千万。
 ふっと葵の脳裏に昨日渋谷の言ったことがよみがえる。

「どうやって、手に入れるとは言ってなかったか?」

 田川はニヤニヤと笑いながら葵を蛇のような目つきで見る。そして声のトーンを落とし、可笑しそうにこう言った。

「あんた、ここに居る人間みんなが本当に更生して娑婆に出ると思ってんのか?」

「それが?」

「それより前科モンがまともに働けるところがあるかよ」

 この男の意図するところが解らない。

「……その気になればあるだろう」

「はぁっは! 甘いね。ただでさえ禁欲金欠生活してんだ。出所したらすぐ手に入れたいと思うだろうよ。そうなりゃヤバイこともするさ」

 葵は目を鋭くして田川に静かに言った。