p63

 都立O高等学校を18歳で卒業。卒業後、歌舞伎町のクラブ・ネオンでホステスとして働く。 上杉渉とはこの時点で逢ったと思われる。
 当人26歳の時、妹芳乃

「自、殺……」

「ああ、妹だろ。マンションから飛び降りたそうだな」

「遺書は」

「遺されていなかったみたいだな。おれが着任する前だし、そこに書いていないから良くはわからないがな」

 思っていた通りの展開になり、葵は切なさとやるせなさにぐっと下唇を噛んだ。

「ちょっと悪い」

 そう一言断って葵はファイルをそのままに、携帯を押す。

「日下と申しますが、恐れ入ります507の七澤をお願いいたします」

 これで、完璧になる。

「ああ、睦月悪いな。 さつきの、例の女性なんだけどさ。名前、教えてくれないか」

 受話器の無向こうからは睦月の声が消え、ざわざわと色々な音が代わりに聞こえた。
 けれどもしばらくして葵の耳に届いてきたのは、はっきりとした、睦月の声だった。

 大沢芳乃さんです。

 

 

「同機はあったわけだ」

 圭助が葵から聞いて直後、言った第一声がこれだった。
 狭いオフィシャルキッチンで小枝子が淹れているブレンドのコーヒーの湯気を見ながら葵はそういう事だと相槌を打つ。