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「そうよ。大体そんな感じだわ。けれど加筆修正がいるわね……」

 にっこりと微笑んだ薫に葵は訳の分からない胸騒ぎを覚える。

「渉は、その通り。日下くんに会う前に、あいつがお風呂に入っている隙を見て仕掛けたの。 脱衣所との温度差で……っていう設定だったわ」

 くるりと葵と向き合っていた体を180度回転させて100メートル以上下に見える相模湖に話しかけるようにして薫は言った。

「戸野辺と結城。あいつ等ははじめから殺す計画だったのよ。渉を面会に行かせた時から。 ……ううん、あの子が、芳乃が自殺した日からっ」

 ぎりっと歯ぎしりする音が葵にまで届く。
 無線で聴いていた渋谷は携帯で風間のところへ掛け、出動要請を願った。

「これがね、あの子の遺書よ」

 ショルダーバッグの中から真っ白の二重封筒を取り出し、三つ折りにされていた便箋を抜き出した。

「1年半前の事は七澤に聴いたから知っているでしょうけど、ただ失恋で自殺したわけじゃなかったのよっ!」

 くぅっと嗚咽する声に葵は歩み寄る。
 そしてそれと同時に薫から手渡された便箋に目を通して、徐々に顔をしかめていった。

「っあの夜、七澤を待っていたあの子は何時になっても帰ってこなかった。22時過ぎたらどんなことがあっても帰ってきなさい。そう、言ったのに……っ」

「久世さ……」

「あの子が帰ってきたのは午前2時を過ぎた頃だったわ。あたしはうたた寝していて、物音がしたから起きてみるとあの子は自分の部屋に居たの。ベッドで泣いていて……っ何も言わなかった!」

 がつっと薫は木の柵を両手の拳で殴り、悔しそうに俯いて涙を溢れさせた。

『戸野辺と結城という七澤くんの友人だという2人に出会い、無理やり……』