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 葵はそれ以上目を通せなくなり、ぐっと唇を噛んで顔を背け、息を殺す。

「絶対に赦せなかったっ!! 親が居なくてもっ、あの子にだけは幸福しあわせになって欲しかったの! それでもっ、それでも姉妹2人、別々の所へ引き取られたって一緒に楽しい時間を過ごしてきたのにぃっ。 どうして? なんで芳乃が犠牲にならなきゃいけなかったのよぉっ!!」

 肩で大きく息をする薫に葵はどうしてやる事も出来ず、もどかしさに一層唇を噛み締めた。

「ふ、ふふ……。恨んだわ、憎んでも憎み切れないほど。 あの夜、七澤睦月があの子に会いにくれば事は起こらなかった。戸野辺知也、結城雅臣はもちろん七澤睦月もどうやって制裁しようか……。 半年間、考えたわ。それで出た答えが、これよ」

 涙でくしゃくしゃになってしまった顔を薫は気にも留めず、はぁっと深呼吸をする。

「……いい空気ね。 利用するつもりはなかった。なんて言ったら嘘になるけど、ごめんなさい」

 くすっと、さっきまでの増悪に満ちた感情をどこかに隠して薫は儚げに微笑った。

 ……嫌な、予感がする。

「向こうに居る方たちにも謝っておいて? 迷惑かけて、ごめんなさいって……」

「久世さん?」

「――――っ好きだったわ、日下くん。さよならっ!」

「っくぜっっ!!」

 目の前でスローモーションのように岸壁から飛び降りた薫の腕を咄嗟に掴み、自分までもが下の湖に急降下した。

「――――っっ!! 葵ぃぃっっ!!」

 圭助の叫び声が辺りにこだました。