エピローグ

p72

『あーおいっ。 こんなトコに来ちゃダメじゃん』

 懐かしい声が、鼓膜に響く。とても心地いい、俺の大好きな……声。

『ほーら。起きないと、さ』

 ゆっくりと重い瞼を開いてみる。そこには、2度と逢えないはずの、彼女がいた。

 小夜……っ!

 昔からずっと伸ばしていた彼女の長い髪を見て俺は驚く。
 そして情けないことに、とめどなく涙が溢れてきた。

『泣き虫は相変わらずだね。ふふっ』

 こみ上げる感情が、言葉より先に俺を行動に移させていた。
 ぎゅっと、彼女の存在を確かめるように強く抱きしめる。

 逢いたかったっ!!
 夢でも逢えなかったから……っ。
 不甲斐ない夫で、ごめん。

『こんなトコに来ちゃダメだよ。まだ、早いって』

 周りを見渡す。そこには、どこまでも続く白い白い世界が広がっていた。

 こんな所に、半年も居たの……?

『……葵が、あたしをここに留めていたのよ?』

 そ、んな……。俺、そんなこと。

『でも、おかげでこうして逢えたんだけどね。 ……葵、逝っちゃって、ごめんね』

 俺、貴女が生きているうちにもっとたくさん言っておきたかったって、あの日、すごく後悔した。

 少しだけ、体を離して、彼女の瞳を見る。